タイヤ選びは車の安全性と性能に大きな影響を与えます。しかし、どのタイヤを選べば良いのかを決めるのは容易なことではありません。
オールシーズンタイヤはその名の通り「一年中使える」という便利さがありますが、それは本当に最適な選択なのでしょうか?
実は、多くの人が見落としている重要な事実があります。本記事では、オールシーズンタイヤに隠れたデメリットとリスクについて詳しく解説します。
また、オールシーズンタイヤが本当に適している状況やドライバーの特性、後悔しないタイヤ選びについて解説します。

オールシーズンタイヤを選んだことで後悔しないために、この記事をお役立てください。
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オールシーズンタイヤとは? 一見便利だけど隠されたデメリットも
オールシーズンタイヤはその名の通り、夏でも冬でも使えるタイヤです。
だからと言って、本当に雪道でも安全に使えるのかというと、そうではありません。
オールシーズンタイヤは妥協からできている?
オールシーズンタイヤはその名の通り「一年を通じて使用することが可能なタイヤ」です。


タイヤのサイドウォールに示されているマークから、その利用可能用途が確認できます。
- スノーフレークマーク
-
高速道路で「冬用タイヤ規制」が実施されていても走行は可能です。ただし、より雪深くなるなど、路面条件が悪化したときに出される「全車両チェーン装着規制」下では、オールシーズンタイヤもチェーンを装着しなければ通行することはできません。
- 「M+S」(マッド・アンド・スノー)
-
トレッドパターンを雪道などでも走行できるようにアレンジしたものです。
「M」はMud(泥、ぬかるみ)、「S」はSnow(雪)の意味で、そのような道を走行できるという意味です。
初めて聞いた人の多くは、暖かい季節だけでなく、寒い季節にも対応できるという利便性に驚かでしょう。
しかし、一見すると非常に魅力的に見える特性には、性能への妥協が必要となります。
オールシーズンタイヤが一年中使用可能であることから、過度な期待を寄せられる傾向があります。
その結果「厳しい冬の環境で同等の性能を発揮すると誤解される可能性」があります。
オールシーズンタイヤの性能バランス|夏季と冬季の兼ね合い



『妥協』ってどういうこと?
オールシーズンタイヤは、暖かい季節にはもちろん普通に使えますが、冬季の雪道では決してスタッドレスタイヤと同じようには運転できません。
雪や氷に対するグリップ力は、スタッドレスタイヤと比較すると劣ります。それは、オールシーズンタイヤが寒冷地に特化した設計ではないためです。
暑い季節にはサマータイヤよりもソフトなゴムが高温により痛みます。そのため、真夏の猛暑でも性能が落ちます。


結論として、オールシーズンタイヤは全ての季節に適しているわけではなく、その性能は「各季節に特化したタイヤと比較すると劣る」ことを理解しておく必要があります。
それが、オールシーズンタイヤの一見の利便性と隠された真実という側面なのです。



中途半端というか、器用貧乏というか…
サマータイヤ、スタッドレスタイヤ、オールシーズンタイヤの性能比較
では実際にオールシーズンタイヤの性能はどのようになっているでしょうか?
性能の違い:寒冷地対応力と氷上性能(JAFのデータより)
タイヤの選択は、その地域の気候や道路状況に大きく依存します。
サマータイヤは暖かい天候下で最良のパフォーマンスを発揮します。
一方、スタッドレスタイヤは寒冷地や雪や氷に覆われた道路での性能が高いです。
オールシーズンタイヤはこれらの間でバランスを取るように設計されていますが、その結果、いずれの極端な状況でも最高のパフォーマンスを提供することはできません。
圧雪路の登り坂での性能
例えば、雪上(圧雪路での坂道)での停止状態からのスタート性能の結果は以下のようになります。
① 平坦路からの発進 | ② 坂道途中からの発進 | |||
---|---|---|---|---|
勾配 | 12% | 20% | 12% | 20% |
サマータイヤ | ||||
スタッドレスタイヤ | ||||
オールシーズンタイヤ | ||||
タイヤチェーン |


平坦路からの発進は、サマータイヤのみタイヤがスリップしてスタートできませんでした。また、20%の勾配を登れたのはスタッドレスのみです。
オールシーズンタイヤは12%の勾配は登れましたが、20% の勾配は無理でした。
坂道途中からの発進は12%であればスタッドレス、タイヤチェーンのみ発進可能。オールシーズンタイヤはサマータイヤと同様に発進できませんでした。
圧雪路・氷盤路(アイスバーン)でのブレーキ性能
圧雪路、氷盤路(アイスバーン)で、時速40km/hの速度から停止するまでの距離を測ると以下のような結果となります。


オールシーズンタイヤはサマータイヤよりは距離は小さくなりますが、スタッドレスと比較すると制動距離は長く、また氷盤炉ではサマータイヤとほとんど変わりません。
このように、オールシーズンタイヤの冬季の性能は、そこまで期待できないことがわかります。
https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/snow/normal
参考ページ:一般社団法人 日本自動車連盟(JAF)ホームページ
オールシーズンタイヤの耐久性の問題と交換周期
オールシーズンタイヤは一年中使える利便性がある一方で、タイヤの寿命は必ずしも長いとは限りません。
スタッドレスタイヤに関しては、冬での走行性を確保するために柔らかいコンパウンドを使用しており、夏季に走行を続けるとバーストの恐れがあります。
一方でオールシーズンタイヤは、サマータイヤよりも柔らかいコンパウンドを使っているものの、サマータイヤに近い設計としているためバーストの心配はありません。しかし、サマータイヤと比較すると摩耗しやすく、寿命は短くなってしまいます。
さらには、オールシーズンタイヤは一年を通して使用されるため、サマータイヤとスタッドレスタイヤを使い分けている人と比較すると早く劣化しがちです。こちらは走行距離によるところがあるので、劣化が早いとはいえませんが。


サマータイヤ、スタッドレスタイヤ、オールシーズンタイヤと、いずれの場合もスリップサインがでたり、ひび割れが生じている場合は使い続けると危険です。



寿命や劣化が激しくなっていたら、早くタイヤを交換するようにしましょう。
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オールシーズンタイヤの限界|全ての状況に対応できるわけではない


性能比較で見た通り、オールシーズンタイヤには限界があります。
天候や気候への適応性の制約
オールシーズンタイヤは、その名が示すように、様々な天候に対応するよう設計されています。
都市部の整備された道路や高速道路では、オールシーズンタイヤの性能は問題なく発揮されます。
しかし、それは全ての気候条件に適応できるという意味ではありません。
特に、寒冷地や雪道における性能はスタッドレスタイヤと比較して劣り、また高温環境下での性能もサマータイヤと比較して一定の制約があります。急な坂やカーブ、雪や氷に覆われた道路、またはオフロードなどの特殊な状況においては、オールシーズンタイヤの性能は限定的になります。
運転のスタイルとオールシーズンタイヤ
また、オールシーズンタイヤは穏やかな運転スタイルには適していますが、アクティブな運転やスポーツ走行には向いていません。
タイヤのグリップ力や乗り心地は、ドライバーの運転スタイルや好みに大きく影響を受けるため、運転スタイルによってはサマータイヤを選択し、冬季はスタッドレスタイヤに履き替えるといったスタイルの方が良いかもしれません。
オールシーズンタイヤが適している状況とドライバーの特性



じゃあオールシーズんタイヤの使いどころはないの?
ここまではどちらかというとオールシーズンタイヤに対して否定的な意見ばかりを述べてきました。ただ、もちろんオールシーズンタイヤが適したユーザーもいます。
気候変動の少ない地域や季節の変化が緩やかな地域
オールシーズンタイヤは一見万能に見えますが、その性能を最大限に活かせるのは特定の環境下です。
オールシーズンタイヤが向いている環境
- 年間を通じて温度変動の少ない地域
- 四季の変化が穏やかな地域
このような気候であればオールシーズンタイヤは一年中一貫したパフォーマンスを発揮します。
極端な暑さや寒さ、雪道や氷道を走行する必要が少ないため、オールシーズンタイヤのバランスの取れた性能が適しています。
つまり、これらの地域ではタイヤ交換の必要性が低いため、オールシーズンタイヤの採用によりタイヤ交換の手間とコストを削減できるでしょう。
安定した運転スタイルを持つドライバー
オールシーズンタイヤは適度な運転条件で最高の性能を発揮します。
スポーツ走行や高速走行など、ハードな運転スタイルを好むドライバーには必ずしも適しています。
オールシーズンタイヤが向いている人
- 穏やかな運転スタイルを持つドライバー
- 急加速や急ハンドルを避け、一定のスピードで安全運転を心掛けるドライバー
このようなユーザーは、オールシーズンタイヤのバランスの取れた性能が理想的な選択となるでしょう。
タイヤ交換や保管の手間を省きたい、または費用を節約したい場合
タイヤの交換は時間と労力を要しますし、スペースに余裕がない場合、使用しないタイヤの保管場所を見つけるのは大変です。
さらに、タイヤ交換にはコストもかかります。これらの面倒や負担を避けたいドライバーにとって、オールシーズンタイヤは魅力的な選択肢となります。
ただし、その選択が一部の性能を犠牲にすることを意味することも理解しておく必要があります。
その選択が適切かどうか、自身の運転習慣、地域の気候条件からしっかりと検討する必要があります。



そして何よりも安全かどうかが重要!
結論:オールシーズンタイヤが適した人は限定的で微妙


「オールシーズンタイヤを選んで後悔した」という声を耳にすることもあります。
これは大抵、タイヤの性能や耐久性、そして総所有コストについて十分に理解せずに選択した結果です。こ
うした後悔を避けるためには、自身の運転環境やスタイル、そして予算について深く理解しましょう。
結論として、オールシーズンタイヤは一部のドライバーにとって有用な選択肢であると言えます。しかし、それは全てのドライバーにとって最適な選択肢であるわけではありません。季節の変化、道路状況、運転スタイル、そして費用などを考慮し、自身に最適なタイヤを選ぶことが重要です。
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- オールシーズンタイヤは凍結に強いですか?
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オールシーズンタイヤはサマータイヤと比べて寒冷条件や凍結路面に対する性能が向上していますが、真冬の厳しい凍結状態やアイシーロードにおいてはスタッドレスタイヤほどの性能を発揮することは難しいです。
特に氷上での制動性能やハンドリング性能はスタッドレスタイヤに比べて劣る傾向があります。 - オールシーズンタイヤの限界は?
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オールシーズンタイヤの限界は「万能」ではないという点です。
夏用と冬用の性能を一定のバランスで備えているため、特定の条件、例えば高温の夏や厳しい冬においては、専用タイヤ(サマータイヤやスタッドレスタイヤ)に比べて性能が劣る可能性があります。 - オールシーズンタイヤで高速道路は走れるか?
-
はい、オールシーズンタイヤで高速道路を走行することは可能です。
しかし、気候や道路状況によっては、サマータイヤやスタッドレスタイヤに比べて運転性能が低下する可能性があります。特に雨天や雪天、低温状況下での高速走行では注意が必要です。